とにかく怖かった。本当に怖かった。
当社が入居しているのは、東京タワー近くの42階建オフィスビルの13階。そのときも、いつもと変わらぬ平日の昼下がりだった。
「揺れてる?」って誰かが言う。ん?確かに揺れてるみたいな感じ。昨夜のお酒の残りのせいか・・・などと思ったけど、やっぱり揺れてる。確かに揺れている。
「結構大きいみたい」・・・さらに誰かが言う。ほんとだ、まだ揺れている。この時点でもまだ危機感はなく、誰彼と窓際に寄って、周囲の状況を見渡す。
「えっ!」「ぅわぁ~」とあちこちで声があがる。揺れが一気に大きくなり、足元が大きく揺れている。左右とかではなく、回っている感じ、座り込む者、机の下に隠れる者。こりゃまずいかも知れん。
「ドア開けて!」と冷静な上司の指示により、出入り口のドアが開放される。なんだか自分たちが置かれている立場が現実のものなのか、夢の世界なのか、わからなくなっている。確か、危機管理といか言って、研修とかあったよな・・・妙に冷静に思い出したりもする。とりあえず「怖いよ~」とtweetしてもみた。
「ミシミシ・・・」「ギィーッ、ギィーッ・・・」と揺れが大きくなるとともに、ビルが悲鳴をあげる。ブラインドが「ガチャガャ」と音を立てて窓ガラスにぶつかり、移動式のキャビネットも「ガラガラ」と左右に動きお互いにぶつかり合う。さすがに皆窓際から離れ、できるだけ姿勢を低くして様子を伺う。。。テレビで見かける「現場」の状況になった。
「・・・・」。もう声はなく、揺れが収まるのを待つだけ。しかし、一向に揺れは収まる気配をみせず、一層大きく揺れているように感じる。入居しているビルはツインタワーで、窓から見える隣のビルも大きく揺れているのが判る。余計に恐怖心が高まる。この間もビルの「悲鳴」は続く・・・。
「怖かった・・・」とあちこちで安堵の声。3分だったか、5分だった?もしかすると1分だったようにも思える「恐怖」の時間がようやく収まり、皆落ち着きを取り戻す。ビルはまだ揺れているが、これは高層ビルの「共振」だと誰かが言う。確かに聞いたことがある。そうか、そうか・・・と納得するけど、やっぱり怖い。ネットを見ると、東北辺りが震源でとにかくデカイと言う事実を知る。「関東」が震源ではなかったのね・・・ホッ・・・。娘や息子に電話(携帯)するが、既に繋がらない状況。あれっ・・・・大丈夫かな?
「&!%$#’)=}*+{・・・」。なんかスピーカーでアナウンスしているけど、良く聞き取れない。何?避難?エレベーター使えないよね?仕事は?・・・・なんて皆がざわついていると・・・
「また揺れてる!」「えーー!?」「ウソー!」と声が上がる。二回目は一回目の恐怖が残っているせいか、ビルの共振が影響か、いきなり大きく揺れたように感じた。もう、窓際に寄る者も「立っていれば感じないよ」と言う者もなく、皆一様に姿勢を低くして「怖い・・・」とつぶやくだけ・・・。この時点では、立ってはいられない状態。
13階とは言え、このときは足が地面から遠く離れていることを実感した。ビルが折れるんじゃないか?天井が崩れ落ちたらどうしよう・・・。もしかしたら、もうダメ?と恐怖の次は、おぼろげに「死」を意識する。特にビルがゆっくりと大きく揺れているので、恐怖もそのスピードと大きさに合せて高まっていく感じです。
どうにか揺れが収まり始め、皆の姿勢が高くなった頃、誰ともなく「避難」と言い出し、その声に呼応するように、ゾロゾロと動き始める。揺れが収まった安堵のせいか、パニック状態もなく「怖かった」と口々に言いながら、冷静に階段でロビーを目指す。携帯、メールと色々と家族とのコンタクトを試みるが、全てダメ。携帯は、まったく使い物にならない状態。
ロビー(2階)は既に多くの人で込み合っているが、緊張感はあまりない。しばらくロビーで待機ののち、ゾロゾロと近くの公園に避難する。
携帯は全く役に立たないが、twitter、Facebookは3G環境でもちゃんと機能していた。そこから、ある程度の情報を知り、同僚のワンセグで被害の甚大さを知る。都内では大きな被害が出ていない様子なので、連絡の取れない娘、息子も大丈夫に違いない・・・と確信する・・・しかないですからね。
娘、息子と連絡が取れたのは避難命令が解除され、事務所に戻った16時過ぎだったかな?どうにか繋がり始めたところで、ようやく・・・と言う感じ。もちろん、外出中の会社同僚も同じ頃に安否確認が取れ、会社として落ち着きを取り戻した。まぁ、直接的に被害が無かったことに皆一安心。。。
事務所に戻ってからは、皆自宅や実家、親戚、知人の安否を気遣い連絡を取ろうとするが、これまた全く繋がらず、ネットの情報を見て心配がさらに高まる。沖縄に無事を知らせようにも、携帯が繋がらないことにはどうにもならず、こちらは18時くらいにようやく知らせることができた次第。心配してますよね。。。そりゃ。
皆一様に落ち着きを取り戻した後は、帰宅問題。なにせ、首都圏でも電車が止まったままなので、多くの従業員は「帰宅困難」な状態・もちろん私も・・・。会社からは、非常食の「乾パン=缶入りパン」とクラッカーが支給され、間接的に「篭城」が指示される。心ある上司からは、カップラーメンが振舞われ、既に会社で夜を明かすことを決めた人達は、何となく合宿気分。私は、21時頃に行き着けの居酒屋に出かけ、そのまま朝を迎え無事翌日の電車で帰り着くことができたのでした(汗)。
娘は、日中に新宿のアルタ前広場で地震に遭遇し、二回目の揺れのときには、大画面で写し出される映像を見ながら、沸き起こる地響きと大きな揺れの恐怖を体験した。その後は、電車が止まったので調布に帰宅できず、そのまま新宿のバイト先(居酒屋)に出勤し、幸いにも深夜に運転を再開した京王線で帰宅できたとのこと。
受験のために上京していた息子は、部屋で歯磨き中で、慌てて受験票と筆記用具を鞄に詰め込み部屋を飛び出したらしい。部屋に戻るも、度重なる強い揺れの度に、帰宅した娘と一緒に何度も部屋を出ることになり、ほぼ徹夜だったとか・・・。
・・・と言うわけで、調布の我が家では幸いに被害もなく、無事なのでありました。
今回の地震発生からの時間経過の中で、最も強く感じたことは・・・
・正確な最新な情報=確かな事実だけが即時に欲しい
・緊急時連絡体制は機能しない=いつもやっていることしかできない
twitterでも、簡単に誰かのtweetをRTする人が多く見られますが、RTの際にも情報に責任をもって欲しいものです。単純に「これは役に立ちそうだ」程度だと、混乱を招くこともあります。ちなみに、当日の電車の運航についても「今日は全ての電車は再開しない」と断言する同僚がおり、その一言で帰宅を諦めた人もいます。実際には、21時頃から順次再開したので、結果「嘘」だったわけです。確かに、一部の路線では早々と復旧しない旨の情報を出していましたが、それは「全て」ではなかったはず。それを勝手に解釈して「全て」だと言い切ってしまう・・・これはダメですね。情報は「早く&正しく」であるべきで、そこに事実以外がくっついてしまうと「嘘」となり、情報として活用できなくなります。まぁ、受け取る側も情報を鵜呑みにせず、評価するという基本動作を忘れちゃいけませんがね。。。同じ玉石混同の情報の中から、自分に有用な情報を取捨選択すると言う行為が必要だとしても、カオスだとそうでないのとは、労力が違いますから。
また、当社も緊急連絡体制を作っていますが、その基本が携帯電話を使うことになっているため、今回は全く機能しませんでした(まぁ、いまどき携帯をベースとする体制を作ること自体???ですがね。。。)。緊急時に発動する機能を作るのではなく、緊急時にも使える機能を設計すべきだと言うことを強く感じました。つまり、普段やっていることが、緊急時にも使えるという発想です。具体的に、今回はtwitter, facebook, mixiなどのSNS系は機能していたことが判っていますので、これを使うことを考えています。なので、今後は家族間の通常連絡は全てtwitterにしようと考えています。家族で相互にフォローしておけば良いわけですよね。。。これから家族間連絡用のアカウントを作ります(マルチアカウント対応のアプリがmustですね・・・汗)。
東京(調布)はいつもの週末です。金曜日の夜に恐怖で眠ることができなかった、娘と息子はまだzzz・・です。彼らの今後の人生において今回体験したことがどのように影響するかは判りませんが、少なくとも身をもって知った恐怖と、それが引き起こした悲劇を結びつけることができたと思いますので「他人の痛み」を感じることができる人間になってくれるものと期待しています。
今回の地震で被害がなかったのは、ほんとうに幸いだったと思う。被災された方々には心よりお見舞い申し上げます。
#あっ、また揺れた。。。携帯の地震速報は頻繁に鳴っています