ひとつのラブ・ストーリーを、江国香織が女性の立場(心情・視点)=「Rosso(ロッソ)」、辻仁成が男性=「Blu(ブリュ)」を描いた作品です。まぁ、構成はともかくとして、恋愛小説であることは間違いないので、はっきり言って「似合わない」と自覚しています・・・いいじゃないですか、好きなんですから・・・。
この作品との出会いは、ちょうど10年前。ハリーポッターやら東野圭吾やら、読書を楽しめるようになった、ちょうどその頃で、知人に紹介されて気軽に読み始めたのはいいが、すっかりハマってしまい、(不覚にも)涙してしまったと言うものです。さらに、その勢いは止まらず、映画化の情報とともに発売されたエンヤのCDを買って車で聴き、(当たり前のように)映画を見に行ったほど・・・(はっきり言って映画は残念感満載でした)。
今回は、たまたま入った会社近くのTSUTAYAの書架でBluを見つけてしまい、何かを考える間もなくご購入!さらに、勢い良く数日で読み終えそうになったので、慌ててRossoを入手した次第。たしか、RossoかBlu、どちかかが先と言う「読む順序」があったことは覚えていたけど、現実にはBluしか書架に並んでいなかったので、あまり気にせずに読み始めた・・・です。
しかし、人間の記憶と言うか、自分の感性と言うか・・・いい加減なもので、あれほど感動したはずの作品なのに、筋書き程度にしか内容を覚えておらず、結構「新鮮」な気持ちで読むことができたのは事実 (汗)。「へー、こんなシーンあったんだ」・・・と言う感じです。
そんなこんなで、Bluを先に読みながらも、以前に読んだRossoの内容が部分的に記憶に残っていたので、あまり違和感無かったんですが・・・(後から読んだ)Rossoのラストで驚きました・・最後のページをめくった時、「なんで(あとがき)なんだ!?」「ページ抜けてない?」・・・確かこの後のシーンは・・・あれ?(とBluの最後の数ページをもう一度読んで)「Bluの方が(時間的に)後じゃん!なにごとぉ~?」・・・実は記憶に残っていたラスト(シーン)は、映画のソレだったようです。
この作品は、RossoをBluが追いかける構成になっていて、ラブ・ストーリーもBluで終わっているのです・・・と言うことは・・・Rossoを先に読まないといかんのです・・・。そして、Bluの続きが映画・・・なんです。前回は(薦めてくれた知人のアドバイスで)きちんとRossoから読んだはずなのに、今回は何も考えずにBluから読んでしまったのでした・・・(汗)。まぁ、仕方ないんですがね・・・ちなみに、映画でのBluの続き・・・「蛇足」だったように記憶しています・・・これまたDVD借りてみようかしら・・・。
10年前にこの作品を読んだ時と今、色々なモノ、コトが変わっているけれど、小説の活字の並びは同じ。でも、当時と今では、受け取り方が違っていて「懐かしい」と言うより「新しい」と表現したほうが良いかも知れません。当時は、等身大の自分を作品に重ねて読んだと言う記憶があり、半ば強引に自身を主人公に仕立て、作品の中で歓びや痛みを共有しようとしていたはずです。今回は、10年前の作品を読む10年前の自身を回顧しながら、作品が伝えたかった(であろう)メッセージを冷静に感じ取ることができたように思えます。少し、オトナになったんですかね?また、数年後に読むときには、違った自分が違った受け取り方をしているんでしょうね(笑)。
同じ曲でも、その時の気分で違って聴こえたりするし、絵とか映画も、そして小説も、そう。絶対値が無いというのが「芸術」と言うもので、優れた「芸術」ほど、後々に残されていくもんなんだろうなぁ・・・そして、大好きなこの作品も残って欲しいものだと、まだまだ暑い初秋の週末にボンヤリと考えるおやぢなのでした・・・。
そうそう・・・10年前には、あまりイメージできませんでしたが、本作品の主人公の女性(あおい)を女優の小雪でイメージしつつ読んだことは・・・内緒です(笑)。