【読書】運命の人

「テンペスト」から続く沖縄シリーズ。こちらは(自分にとっては)歴史ではなく、記憶の世界である1970年代から2000年までの沖縄が舞台となった作品で、登場する人物や場所が実在するため、フィクションと言いながらリアリティ溢れる内容になっています。

「運命の人」特設サイト

全四巻の大作にも関わらずサラサラと読め進められたのは、山崎豊子のタッチの良さと、作品に登場するひとつひとつのエピソードが身近なものだったからかも知れません。また、主人公が父と同じ新聞記者であったことも、楽しめた要素だったと思います。

(ここからはちょっとネタばれになりますが・・・)

一巻から三巻までは法廷闘争の色合いが濃く、「白い巨塔」を思い出しました。正直、このあたりでは「もう少し沖縄を描いてくれよーー」と、ちょっと残念に感じていましたが、遅れて届いた第四巻、これにはやられました。

両親から語られてきた「沖縄戦の悲惨さ」については、それなりに理解してきたつもりだったのですが、その後の米統治下での「圧政」については、子供だったので肌で感じることが少なかったせいか、日常化していたせいか、良く理解していませんでした。まぁ、勉強不足と言えば、その通りなんですがね。。。。汗。この作品は、そんな自分に、日米の「両国」から都合良く扱われてきた沖縄の悲劇の歴史(近世)を、改めて教えてくれました。特に、この作品に登場する事実は歴史の中ではなく「今日も続いている」と言うことを再認識させられました。

基地が存在することは現実であり、ある意味「当たり前」の状態なのが現在までの沖縄。フェンス1枚隔てた「そこ」は、沖縄でも日本でもない「アメリカ」。子供のころにドルで小遣いをもらい、近所の商店でアメリカ産の甘いお菓子を買っていたことも「当たり前」だったんですから。。。。また多くの人が基地の中で働いており、実際、母もその一人でした。

復帰の意味は良く判っていなかったけど、住所に「沖縄県」と書けるようになったことを喜んだ記憶があります。テレビで見る「日本」と当時の「沖縄」は、言葉も服装も同じで、学校で習うことも同じだったので、自分にとっては「ドル」が「円」に変わったことくらいが大きな「変化」でした。

復帰から6年経った1978年に、車の通行が右側から左側に変わったことで、外見上は完全に「日本」となりました。当時の自家用車も左ハンドルのカローラで、メーターもマイル表示。まぁ、当時の沖縄だと「普通」ですね(笑)。免許を取った頃は既に左側通行に変わっていましたが、時折この車を運転していたことを思い出しました。

また、ドライブインと言う自動車で入れるレストランがあって、注文した料理(ハンバーガーだったかな?・・・)を、駐車した車の窓へスタッフがセットしてくれたトレーに置いて車内で食べたりもしたなぁ。。。

などなどと思い出すだけでも、貴重な経験をしてきたように思える。もちろんのことだけど、自分らより10歳くらい若い世代だと判らないだろう。。。

子供として肌で感じた統治下の沖縄は、そんなに悪いものではなかったように記憶しているが、実際には多くの事件や問題が発生していたことを忘れてはならないと思う。そして、我々の世代がもっと学び、伝えていかなければならない事がたくさんあることをこの作品は教えてくれた。

薩摩から明治政府、そして日本政府からアメリカへと移り変わる歴史の中で翻弄され続けてきた沖縄。今また、基地問題や尖閣諸島問題を通して、日米中国が囲むテーブルの真ん中で「カード」として扱われているように感じる。そんな混沌とした時代だからこそ、もう一度沖縄について考える必要があると思う。

「テンペスト」「琉球処分」そして「運命の人」。学ぶことを教えてくれた、素晴らしい本に出合えたことに感謝したい。そして、舞台となった場所にできるだけ多く足を運び、歴史や過去に起こった事実を肌で感じ、自分なりの歴史感、世界観を持てるようになりたいと思う。そして、美しい歴史を持つ「琉球」であり続けられるように、何らか尽力したいと思うのでありました。